返却。

吉村昭・著「陸奥爆沈」。
昭和18年6月8日正午、濃霧立ちこめる瀬戸内海柱島泊地にて主力戦艦“陸奥”が突如大爆発、たった数分で沈没した。日本海軍は直ぐさま軍機扱いとし、爆沈事実の漏洩を防ごうと務めた。
敵潜水艦の攻撃?戦艦、弾薬設計における不備?査問委員会では様々な推測が飛び交い、可能性が検討されるが次第に海軍組織の根底を揺るがす、ある原因が浮かび上がる…。


正式記録の乏しい中、吉村氏が当時の関係者に聞き取りを行い、謎に迫る様子は実にドラマチック。爆沈直後の周囲に投錨していた各艦の混乱、行動の記録もまるで映画を観ているかのようだった。
陸奥に限らず、爆発沈没事故は過去にも幾度となく起こっており、それらの原因がほとんど似通ったものである事に驚く。
厳とした規律の中、世界に誇る軍艦を沈めたのは何だったのか。軍事技術の進歩ではどうにもならない、65年前の海軍の実像を描くドキュメンタリー小説。


陸奥爆沈 (新潮文庫)