みんな待っている。

モノノ怪」化猫・大詰め、最終回。
列車には森谷を残し、他に誰もいなくなった。延々と走り続けるその中で薬売りは彼と対峙し、“理”を導き出す。


化猫・二の幕レビュー
以下ネタバレ。




アヤカシであろう猫は“真”を知る為に、託された市川の念を各々刻まれた記憶として残した。それを発端として薬売りは時を遡り、“理”の風景を探る。


本来ならば乗客達は目撃者、あるいは証言者となって非業の死を遂げた市川の魂を救えたはずである。しかし何の因果か、誰も彼女を捉える事もなく、後に関わろうともしなかった。
市川の存在をしっかりと見つめ、確かめた者は誰一人としていない事や、全員が自分自身を守り、視線を逸らした軽率な行動が、偶然にも積み重なり最終的に物の怪を生み出す切っ掛けともなった。それはたとえ巻き添えだったとしても。
現実とは残酷で、人との繋がりなど二の次である場合が多い。やはりマネキンこそ本当のリアルなのか?


そして前回、取り殺されたと思っていたチヨ以下五人は、結局現世へ帰された。もしかしたら森谷と同様に発車前のシーンに戻されたのかもしれない。そこで下車するか否かで運命が決まったのかも。当然、市長と森谷も自己を見直す機会はあったはず。しかしそれすらも拒んだ彼らは、化猫の胎内で決して停車しない無間地獄へと墜ちていく。


人間は他者と比べ排する事で、自らの価値を見出し高める。それは森谷だけに限らず、女である市川も同じ。彼女がそういう志向が強い人間だったからこそ、愚弄されアイデンティティを穢された事が取っ掛かりとなって、強い怨念を持つに至ったのだろう。
上司と部下、男と女、自己と他者、そして人と物の怪、決して相容れないまま関係は続く。
正しい人間などいない、愚かですらある。だか、その為に薬売りがこの世に居る。


「……物の怪を絶やすことは出来ぬ。されど、物の怪を斬り、祓うことは出来る……」


人は人の、物の怪は物の怪の在るべき場所がある…と、彼は指し示しているような気がした。


モノノ怪 伍之巻 「化猫」

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さて「怪〜ayakashi〜」から見続けた甲斐もあって、イイ作品に出会えて良かった。とりあえずブックレット目当ての座敷童子DVDは予約しているので楽しみ…ですよ。